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Whole Earth Station FM COCOLO [Whole Earth RADIO] / Every Sunday 6:00a.m.-7:00a.m.

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2021.1.31
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神戸発、未来とWhole Earthへのメッセージ 「次世代につながる思い」

1.17からの3週シリーズ、最終回。前半のゲストは震災を経験した外国人のひとり、FM COCOLOの番組を担当したこともある中国古箏奏者の伍芳(ウーファン)さん。後半は、農業を通じた未来への取り組みについてのお話。一般社団法人KOBE FARMERS MARKERT理事の小泉亜由美さんと、参加する若者たちの声をお送りしました。

【前半:伍芳さんのお話】

震災当時は来日から5年目、立命館大学の学生だった伍芳さんは西宮・甲子園にお姉さんと一緒に住んでいました。神戸・山手の友人宅に旅行帰りに宿泊していたところに地震が発生。その後西宮まで車で送り届けてもらうと自宅は全壊しており、お姉さんが亡くなったことを知りました。葬儀や仮住まいはお姉さんの周囲の方々が用意してくれたので、生活面での苦労はほとんどなかったという伍芳さん。幸い壊れずに残った楽器を手に徐々に練習を再開し、翌1996年2月にはチャリティー・コンサートで演奏、同年9月にはアルバム『筝心』でデビューしました。その後は日本における中国楽器ブ-ムの先駆け的な存在としてこれまで14枚のアルバムをリリース。南こうせつさん、伊勢正三さん、東儀秀樹さん、西村由紀江さんなど数々のア-ティストと共演を果たしています。

伍芳さんにとっての神戸は、お姉さんとの思い出の地。華僑の文化もあり異文化に柔軟で、故郷の上海にも似た港町。海と山が近く、風を感じるまち。常々「いつか住みたい」と語ったお姉さんの思い出を胸に、いまも神戸に暮らしています。そんな伍芳さんが未来に伝えたいメッセージは「後悔しないために、いま大切な人に、素直に感謝の気持ちを伝えること。命を大切にしてほしい」。伍芳さんは、4月21日に神戸・御影の世良美術館で「希望の風 -しあわせを運ぶ 爽やかな春のプロムナード-」と題したコンサートを予定。二胡奏者・沈琳(シェンリン)さんとの共演です。

▼番組では、伍芳さんと久野木史恵さんによるユニット「KOTOKOTO」の楽曲を2曲お送りしました。
M1. 彩虹橋 / KOTOKOTO
――「姉との思い出のスポット、六甲山からの夜景を見て、虹が橋となって姉に届くようだと思って作った曲」。
M2. 夢 / KOTOKOTO
いずれも、いずれも2019年のアルバム『FANTASIA』収録。中国のと日本の二十五弦箏によるコラボレーションで、同じルーツを持つ中国と日本の「KOTO」がひとつになって新しい音楽世界を作り出しています。

【後半:EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKET】

神戸市役所横の東遊園地で毎週土曜の朝に開催され、今年で7年目を迎える「EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKET」。取材に訪れたのは1月16日、同じ東遊園地内で翌日の「1.17のつどい」に向けた準備が進められる中、まずは小泉亜由美さんにお話を聴きました。小泉さんが理事を務める一般社団法人と神戸市との共催で行われるこのFARMERS MARKETは、生産者と消費者とつなぐ場。農業従事者の高齢化が進む中、神戸での若者の新規就農を支援し販路を構築しながらも、農家さんを一方的に応援するのではなく、彼らにも消費者の健康や暮らしを応援してもらうというフェアな関係を目指しています。

コロナ以降のFARMERS MARKETには、農業や食に興味を持つ大学生のボランティア参加が増えました。家でも学校でもない新しいサード・プレイスで同世代や農業・行政に携わる大人たちと交流することで、多様な生き方・仕事・働き方があることを体感してほしいと願う小泉さん。より若い世代である小さな子どもたちも積極的に迎えいれています。野菜がどこでどうやってできているか知らないまま育つことの多い都会の子どもたちが農家さんたちと触れ合い、食べるときに作り手の顔を思い浮かべられるようになれば、フードロス問題の解消にもつながるのではないか。昨今の「SDGs」についても小泉さんは「結局は全部、次世代のために何ができるかを考えることで、今こそ行動に移す時」だと言います。

FARMERS MARKETでは、募金活動も行なっています。ボックスが常設されている「BE KOBE募金」の寄付先は固定ではなく、その時々に最も支援が必要と思われるところを選択。この日は「朝ごはん募金」が実施されました。これは毎年1.17に神戸で行われてきた炊き出しの慣習を継承して地元の婦人会が始めた粕汁の振る舞いが、今年はコロナの影響で見合わせになったことを受けて引き継いだ取り組み。「時間では癒えない深い悲しみの心を温かくするにはまずお腹から」という思いのもとに作られるぽかぽかの粕汁。剣菱酒造が酒粕を、FARMERS MARKETに関わる農家が野菜を寄付するなどして材料を調達、調理はコロナで打撃を受ける地元の飲食店に依頼して販売する形をとりました。この売上の半額をコロナに立ち向かう医療従事者に寄付することにしています。

次にお話を聴いたのは、FARMERS MAREKTのボランティア・スタッフで関西学院大学国際学部4回生の吉田ありすさん。フランス留学中に都市に根付くマルシェの存在に興味を持ち、昨年からこのFARMERS MARKETに参加しています。コロナ禍で大学はオンライン授業、友人と会う機会もない中、人とのつながりの尊さを実感できるこの場所が心の支えになったという吉田さん。生活の中でいちばん大切な「食」を若い人たちが農業に参加して支えていることを知り、自分も支えられる消費者になりたいと考えるようになりました。また小・中・高と神戸の学校に通い震災について学んできた吉田さんは、実体験していない世代ですが自分事として震災を捉え、将来的に災害に直面した時にどう乗り越えていくべきかの覚悟を持って暮らしていきたいと語りました。「神戸は人の中にある」ことを教えてくれる、力強い言葉です。

最後は、FARMERS MARKETに参加する若手農家の中から、兵庫県朝来市で化学肥料と農薬を使わず伝統野菜の「岩津ねぎ」などを栽培する久 洋平さんのお話。農業学校での研修中にフィリピンの出身の方に「お金は食べられない」と言われた経験から「食の向こう側」を考えることを意識し、大学を1年間休学して農業を学んで卒業後に新規就農した久さん。身近な食について考えてほしい、なるべくローカルなものを選ぶことで地域が守られる仕組みを大事にしてほしい、と語りました。久さんにとっての神戸は、自然な形で多様性が共存するまち。震災があったからこそ隣人とのつながりの大切さを人々は知っているのではないか――そんな思いを寄せる神戸の地で週1回さまざまな人と明るく交流し、朝来に帰ってまた農業に取り組みます。

▼番組後半でお送りした楽曲:
M3. I Won’t Give Up / Jason Mraz
――オーガニックにこだわり、アボカドやコーヒー豆などを栽培する自身の農園「MARZ FAMILY FARM」を営むJason Mrazのナンバー。
M4. I Still Haven't Found What I'm Looking For / U2
――1987年のアルバム『The Joshua Tree』からのヒットナンバーで、邦題は「終わりなき旅」。

  • DJ:MEME
  • ゲスト:伍芳(中国古筝奏者)/小泉亜由美(一般社団法人KOBE FARMERS MARKET 理事)他

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