2020.11.29
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アートとストリート・カルチャーの新たな発信基地、心斎橋PARCO<後編>
この秋9年ぶりに大阪に帰ってきた「心斎橋PARCO」では、さまざまなアートが発信されています。今回は、オープニングに合わせて展覧会が企画された海外アーティスト2組を紹介。それぞれのアーティストの生き方や作品について、展覧会のプロデューサー・重藤瑠衣さんのお話を聞きながら、彼らのアートが世界に何を発信し、どんな影響を与えてきたのか?を考えました。
まずは、「MR.BRAINWASH EXHIBITION "LIFE IS BEAUTIFUL"」。
“バンクシーによってアーティストになった男”と言われるMR. BRAINWASH、日本初の本格的な個展には約80点の作品が展示され、すべて販売されています。
MR. BRAINWASHとは・・・
本名ティエリー・グウェッタ。フランス生まれ。1980年代にLAに移住。 2007年から映像作家としてキャリアをスタート。そしてあの覆面ストリート・アーティスト、バンクシーが監督したドキュメンタリー映画『EXIT THOROUGH THE GIFT SHOP(イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ)』(2010)で、一躍有名になった人物。映画だけ観ると、え?そんなすごい人なの?バンクシーに乗っかって出てきた人物、というイメージもあるかもしれませんが、その後MR. BRAINWASHは世界最大級規模アートフェア 「アートバーセル」での大型個展や、マドンナ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、リック・ロスなどのアルバム・ジャケット制作、ミシェル・オバマ前大統領夫人や、サッカー選手のペレとアートコラボレーションなど、ポップ・アート界の重要人物として世界的に、ジャンルを超えた活動を展開してきたのです。
MR. BRAINWASHの作風は、大衆・消費文化を取り込んで大量生産していくというポップ・アートの要素と、ストリート・アートの表現手法(ペンキ、スプレー、ステンシルなど)をミックスし、対立軸ともいえる要素を調和させたり衝突させたりして、様々なスタイルで、自由に、数多く、生み出していく・・・というもの。アンディ・ウォーホールや、バンクシー、時には純粋芸術へのオマージュ、そこに、ディズニーやピーナッツのキャラクター、アインシュタイン、スターウォーズといったポップ・アイコンをサンプリングしているかのような、大胆不敵でユーモアあふれる作品です。ちなみに、展覧会のメインビジュアルとなっている作品は、アンディ・ウォーホール的なマリリン・モンロー像が、バンダナのマスクを巻いているというもの。
「LIFE IS BEAUTIFUL」というタイトルは、MR. BRAINWASHが世界各地で自身の個展にいつも付けているフレーズ。作品のタイトルもストレートにポジティブなメッセージが多く、それがMR. BRAINWASHらしいところ。今回、大阪での個展のために制作した作品もあり「あれも、これも」とどんどん送ってくるので、すべての作品を展示することが出来なかったと語る重藤さん。チャーミングな人柄がうかがえるエピソードです。
そしてもうひとつが、ゲイを描いたアートでLGBTQの権利を訴えた作家、トム・オブ・フィンランドの日本初の個展が大阪に巡回してきた「Reality & Fantasy - The World of Tom of Finland」。1946年(第二次大戦後)から1989年の間に制作された約30点の作品が展示されました。
トム・オブ・フィンランドとは・・・
本名「トウコ・ラースネン」。今年、生誕100年(1920-1991)。
ゲイアートの先駆者で、“ゲイカルチャー界のウォルト・ディズニー”の異名を持つアーティスト。第二次大戦後のフィンランドでは同性愛が厳しく罰せられたため、周囲に隠れて本能的な欲望をドローイングとして表現し続け、「トム」と名乗り描いた絵がアメリカの雑誌で表紙を飾ったことをきっかけに、
アンダーグラウンドからアートの表舞台へ。アメリカに移住して活躍し、LGBTQの権利を世界中に押し進め、ゲイ・カルチャーの創成期を担ったLGBTQのレジェンドです。
コスチューム・制服系、革ジャン、肉体労働的に働く姿など、美しくたくましい男性たちの身体を、官能的にエロティックに描いたトム・オブ・フィンランドの作品はゲイ・カルチャーのアイコンとなり、数多くのアーティスト/デザイナーたちに影響を与えました。フレディ・マーキュリー、アンディ・ウォーホル、デイヴィッド・ホックニー、ジャン=ポール・ゴルチェ、トム・フォード、ロバート・メイプルソープ・・・ LGBTQの感性がいかに現代カルチャーに欠かせないものであるかを感じさせます。
多様性を尊重し、ジェンダーにとらわれないファッションやアートの発信を続けるPARCOらしい展覧会です。