FM COCOLO

Whole Earth Station FM COCOLO [Whole Earth RADIO] / Every Sunday 6:00a.m.-7:00a.m.

ローカルもグローバルも。さまざまなトピックを“Whole Earth”や“SDGs”の視点で考える、1時間の特集プログラム。

ローカルもグローバルも。
さまざまなトピックを
“Whole Earth”や“SDGs”の視点で考える、
1時間の特集プログラム。

Whole Earth RADIO

2021.6.13
ON AIR

松本 隆と最果タヒ

今年3月に、詩人・最果タヒさんの詩の世界を取り上げでお届けした「Whole Earth RADIO もしもし、こちら最果です」の中で、最果さんが尊敬してやまない作詞家の松本隆さんをスペシャルゲストにお迎えしたスペシャルトーク、オンエアできなかった貴重なトークが実はたくさん残っていた!ということで、今回「完全版」としてお送りしました。

■最果タヒさんが「松本隆の詞」に出会ったのは…
10代の頃、ロック名盤の本を買って、順番に聴いていった時に、はっぴいえんど に出会った。「え!!なんか…歌詞がスゴイ!言葉自体が音楽になってる!」と思ったのが、自分にとっては革命が起きた、みたいな。そこから言葉を書く人になりたい」と強烈に思うように。

■言葉とリズムの関係性について…
ドラマーでもある松本さん「リズムがいい言葉ってある。詩は韻文。小説なんかはダラダラ書いててもいいんだけど。詩はやっぱりリズムがあった方がみんなが楽しい」。
最果さんによると、「体の中で響いて繰り返して記憶の中に残っていくうちに、だんだん意味が染み込んでくるとか。なぜかわからないけど、すごい好きだなって思ったのが、何年かしてから理由がわかるとか…歌の言葉にはある。言葉が何重にもいろんな意味が込められているのが、何重にもなってるままで渡してくれる瞬間の歌詞ってあって。そういうのがやっぱり面白い」

■説明しない言葉と言葉の間、行間について…
松本さんは「僕は、説明は全部とっちゃいますから(笑)」。
最果さんは「歌詞が好きになったのも、文脈がとんでる方がむしろカッコよく見えるのが歌詞の言葉だと思って、10代の頃好きで夢中になったので。自分で書いてても、説明になってるなと思ったら、全部ボツにしたりします」

■同じ言葉でも、歌う人が違うと印象が違う、ということについて…
最果さんは「同じメロディーで同じ言葉を歌っているのに言葉の見え方が変わるのはすごいい面白い。はっぴいえんどを初めて聞いたのが「春よこい」。“お正月”とか“こたつ”という言葉ってこんなにかっこよかったっけ?と思った。メロディーと言葉が不思議な組み合わせで。“お正月”とか“こたつ”とか言葉の中に情緒もあるし、メロディーとしての情緒もあるけど、どちらも支え合ってない。両方がすごく研ぎ澄まされている。だからこそ、すごく高いところで重なり合っている感じがする」

■はっぴいえんど 『12月の雨の日』タイトル秘話
「はっぴいえんど は9月ぐらいにメンバーが集まって、まずは大滝、細野、松本ではじめようかって。何作ったらいいかわからないんだよね。僕は詩を書けって細野さんが言ってたから、詩を書こう、と。でもそれまで書いてないんですよ、ほとんど。だから、下積みゼロ。いきなりはっぴいえんど、いきなりゆでめん。あれがほぼ処女作。その中でも“春よこい”と”12月の雨の日”が1番最初に作った。それも同じ晩に作った。大瀧さんの部屋に行って。そこで詩を2つ書いて…。最近調べた人がいて。1960…何年だっけな(笑)…の12月に雨が降った日は1日が2日しかなくて、11月30日なんですよ、いちばん可能性が高いのが。11月30日に、雨が降ってて、それは確かに記憶がある。詩を2つ書き上げたら帰ったんですけど、その時には明けて、12月1日になってるんです。だから “12月の雨の日”ってタイトルになって。最初、詩を渡した時には“雨上がり”ってタイトルだったのね。途中で僕、変えたみたいで。ちょっと弱いなと思ったみたいだね」

■タイトルに関して…
松本さんは「タイトルをまず考えますね。で、別にそのタイトルじゃなくてもいい、みたいで、途中で変わっちゃうことも多い。人から言われたり…例えば、角川映画で映画の主題歌作ってね、”主題歌になったら映画のタイトルになるからね”って言われて、”あぁ、そう”って言って。『探偵物語』ってついてたり…(笑)。詩の中身とは全く関係ない『探偵物語』で(笑)なんとなくそれで、みんないいことになっちゃう(笑)」

■はっぴいえんど『かくれんぼ』の歌詞の誕生秘話
最果さんは「冒頭の2行が情景描写。三人称にも一人称にもどちらにもみえる。私が出てこないから。でもその歌詞の後に「私は熱いお茶を飲んでる」と出てきて、それまで聞いてきた言葉は肉体を介して見ていた景色なんだとわかる。言葉単体で小説とか詩とか本で読む言葉の魅力の良さがある。普通、歌の言葉って消えていくもの。その場その場できらめく言葉がパパッと映るのが歌詞の魅力の一部でもある。でも、それと同時に本で読むのは残っていく。視界にも残っていくし読む人も残していくつもりで読むから。その中で言葉が自分に急に近づいてきたり、急に体を持って現れたりとかした時の「ハッ」という緩急によって心が惹きつけられるみたいなのが、両方ある。松本さんの歌詞には。何年経って読んでも「これすごいな...。歌詞でこれができるってすごい...」と思う」と歌詞を分析。
松本さんはこの歌詞に関して、「渋谷に道玄坂ってあって。途中に百軒店っていう小さなお店がいっぱい詰まった路地がってね。そこにブラックホークっていうロック喫茶があったんですね。そこに昼間行って、ぼーっと一人でコーヒー飲んで、暇だから詩でも作ろうかなと思って、そこでサラサラって書いた(笑)。昼なのに暗くて、曇りガラスみたいなところから陽がさしててね。その頃は、タバコ吸ってる人が多かったんで、みんなが吸うタバコが雲みたいにたなびいてるわけ。なんかそのたなびいた感じが雲みたいって思って。それで“曇った冬の”って、出だし書いたら、大瀧さんが間違って「曇った空の」って歌ったんだよね、確か(笑)で、その間違えたまんま、世に出ちゃったから、そっちの方が正しくなっちゃって(笑)僕、歌入れも同時に聞いてたんですけど、全然自分でも気づかなくて…半分は僕の責任だなと思って(笑)そのことはずーっと内緒にしてきたんだけど、(大瀧さんが)亡くなって随分経つから、もういいやと思ってね(笑)」
そうお茶目に話す松本さんに、この歌詞から衝撃を受けていた最果さんは、「受け止めきれない…(笑)でも、まぁそういうものですね。さらさらっと書かれたものがずっと残る。で、見る人にとってはすごい重いものに…」と語りました。

■松本隆さんが最果タヒさんに対して思うことは?
「ずっと現代詩は死んでたと思ってたんだけど、最果さんが出てきて、あ〜、詩人はまだ生きてたと思ってね。日本の、“寺”の方の詩をひとりで背負ってたってると思う。」「古い詩人はたくさんいい人いますから…萩原さんとか、中原さんとか、宮沢さんとか…。僕らの世界って、新作作ってポンっとテーブル置くとね、昔の偉人とかと比べられるんですよね。特に、クラシックで新作作ったら、僕は詞だからいいんですけど、作曲家の人はいきなりベートーベンと比較されたり。可哀想だよね(笑)僕は詞だから、C調に作ってますけど(笑)。最果さんも同じで、そういう偉人たちにもまれて…苦しんでください(笑)」

■言葉が時を越える、と思うことは?
松本さんは「古事記を詞にして、藤舎貴生っていう横笛奏者が作曲してくれて京都の南座で発表したことがあってね。その時に思ったんですけど、面白いです、日本は(笑)。神話の時代から一生懸命言葉を書いてる人たちがいて、和歌の原型もあるしね。なんか、面白いです。そういうことも、僕はこれからやりたいけどね」

■全てを語らない…詩を書く際に削る作業、選ぶ作業について。
最果さんは「全てを語ると台無しになると思っているんです。単純にいいなと思う風に書けてる時は、余計なことを言ってない時なのかなと。自分自身がいいなと思っている歌詞とか言葉とかって、聞き手とか読んでる人をこっちだよって案内しようとしないんです。聞き手が、「あ!これはあのことかも!!」って思えたりとか、あかるい歌に聞こえるとか、自分の悲しみにあっているなと思う時って、その人が手を伸ばして、その人が受け止めにいっていて。その時、歌詞側、言葉側がコントロールしようとしてないのをすごく美しいと思うから、自分が書いてても、自然と削ろうというよりは、自然とそっちの方向に行けた方が、自分が書いてて楽しいし、面白いって思いますね」

■言葉を受け取り手に任せること。
松本さんは「なんか描きたいんだけど、説明しても、描いたことにならないっていう感じ。僕の場合、なにかをやりたいって思ったら、周りを一生懸命作っていくんですね。結構、克明に語っています。ディテールを積み重ねるっていう感じなんだけど。で、本体はなにも書かないみたいな。すると周りのディテールがなんとなく本体をホログラムみたいに描いてくれるんだよね。そっちの方が正しいんじゃないかなって。」
最果さんは「松本さんの歌詞を読んでると、言わないことで本当になってるっていうのが、いくつもあるというか、それが、むしろ…これを歌っている言葉の僕とか私とかの目の光みたいなものを信じられるって思うんです。この瞬間に。その人が何を見てるかとか、どんな時間を過ごしているとか、そういう部分がば〜っと見えてく中で、その人が見つめてる、そのひとつだけがわからないけれど、それだけが歌全体として最後の自分の中に残っていて、それを信じられるみたいな感覚になる時があって。それって詩とか言葉を読む体験として一番…“読んだ!”って感じがする瞬間ですよね」


「最果さんにこれだけ褒められると、また新しいファンが増えちゃったり、若い女の子の…(笑)最果さんにこんなに分析されるとね(笑)」と茶目っ気たっぷりお話してくださる松本隆さんの笑顔が印象的、そしてその松本さんに「最後の詩人」と称され、「火を絶やさないように」と言われて、恐縮しきりの最果タヒさん。おふたりが感性で繋がっていることを感じさせるスペシャルトークでした。


◆「最果タヒ」最新情報◆
http://tahi.jp
現在、神戸三宮の再整備「KOBE VISION」の街中(まちなか)アートプロジェクトで「最果タヒと街の風景」と題された作品を展示中。
古部市役所本庁舎2号館解体工事の仮囲い(約100メートル)と、「こども本の森 神戸」建設工事の仮囲い(約50メートル)の2ヶ所に、最果タヒさん書き下ろしの作品約40点を展示。
期間は10月まで。


◆「松本 隆」最新情報◆
7/14に、作詞活動50周年を記念して、時を越えて愛される松本作品をカバーするトリビュートアルバム「風街に連れてって」がリリースに。
https://columbia.jp/matsumototakashi/

  • DJ:池田なみ子
  • ゲスト:松本 隆/最果タヒ

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