2月10日(金)に開催された「大村雅朗25th メモリアルスーパーライブ」大阪公演の模様をステージ写真で振り返ります!
“時代の音”を創った早逝の天才音楽家・大村雅朗没後25周年トリビュート公演が大阪フェスティバルホールにて開催されました。
【公演概要】
『大村雅朗 25th Memorial Super Live ~tribute to Masaaki Omura~』
■日時:2023年2月10日(金)18:30
■会場:フェスティバルホール
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開演時刻になり、まず現れたのは砂原良徳。電気グルーヴを経て、METAFIVEへの参加、自身のバンドTESTSET結成など多彩な活動でも知られるサウンド・プロデューサーが、明滅するライトの中、DJプレイを開始。1986年にリリースされた大村の初プロデュース・アルバム『The Soundtrack “YOU GOTTA CHANCE”』からのインスト曲に交えて「No No サーキュレーション」「その気xxx」「天使のウィンク」などの代表曲を繰り出してゆく。デジタルビートの使い手としての大村が浮かび上がるセレクトだった。
約15分間のセットにつづいて、「このイベントの火元責任者」佐橋と「そのアシスト」亀田が登場し、砂原をねぎらうと最初の歌い手を呼び込む。
【八神純子】
■M1:明日に向かって行け
■M2:みずいろの雨
■M3:ポーラースター
■M4:DAWN
【ばんばひろふみ】
■M5:SACHIKO
■M6:Tenderness
トップバッター八神純子の「大村さんと私は特別な関係です」という茶目っ気ある言葉に場内は一瞬ドキリとするが、それは一度しか訪れないデビューヒットをともにした仲という意味。その「みずいろの雨」を、当時をしのぐ勢いの圧倒的な声量で、ナツメロではなく、現役のポップソングとして披露してくれた。
ばんばひろふみは、’79年、アルバムのレコーディング中、録音予定だった曲の編曲を大村がし忘れてきたというエピソードを語る。急遽、名手・羽田健太郎のピアノでアレンジをしながら片っ端から大村がスコアにしていったのが、大ヒットした「SACHIKO」だった。あらかじめ編曲を用意していたら、ピアノで始まるこのイントロはなかったかもしれない。その言葉を受けて聴く「SACHIKO」はまた格別の響きだった。
【南佳孝】
■M7:スタンダード・ナンバー
■M8:ストライプの雨の彼方
南佳孝は「スタンダード・ナンバー」を歌って登場。 薬師丸ひろ子の「メイン・テーマ」の異名同曲だが、ここで、その詞を書いた松本隆が壇上に顔を見せ、南、佐橋、亀田と4人でのトーク・コーナーが始まった。
’73年、「フォーク全盛だった当時、全然違う方向の、都会をテーマに作ろう」としたのが、松本がプロデュースした南のデビュー作『摩天楼のヒロイン』だった……そんな話をしていると、槇原敬之がパイプ椅子を手に、穏やかに乱入。槇原がデビューしたのは’90年で、当時、渡米していた大村とは面識がないため、在りし日の印象を教えてほしいという。
松本は「普通の歌い手よりイケメンだった」と語り、佐橋は初めてレコーディングにギタリストとして呼んでもらったときの印象を「怖かった」と語る。「最小限しか話をしないから」。寡黙で男前。そう聞いて、(大村本人との面識がない者同士の)亀田と槇原が、顔を見合わせているのがなんともおかしい。
大村の音楽性について、「いつも旬の、最新のサウンドを探していて、僕らみたいな洋楽好きには堪らない魅力があった」と佐橋が語ると、「(大村は編曲だけでなく)作曲でも、いい曲をいっぱい書いてた」と松本。「真冬の恋人たち」「セイシェルの夕陽」と曲名を挙げながら、「無駄な音が入ってない」と続ける。
「詩みたいなの。余計な言葉を省いていくと詩になるわけ。彼は楽器で詩を書いてる」と称賛し、個人的にも「弟みたいだった」と懐かしそうに述懐する。
最後に亀田が「人生の中で」と大きなスパンで「大村さんの曲は効き目が長いんですよ」と語っていたのも印象に残る。
【大澤誉志幸】
■M9:そして僕は途方に暮れる
■M10:晴れのちBLUE BOY
■M11:ラ・ヴィアンローズ
■M12:CONFUSION
【渡辺美里】
■M13:Believe
■M14:君はクロール
■M15:Lovin’you
■M16:My Revolution
ここから後半。亀田が「大学のときにこの曲を聴いて、音楽をやろうと志した」という、あのイントロに乗って大澤誉志幸がステージに。「そして僕は途方に暮れる」をソウルフルに歌い切ると、この曲は多くの人にカバーされ、同名の映画も封切られたばかりという話題を語る。そして音楽界に物故者が相次いでいることにも触れ、それでも音楽は残る、と言って「LA VIE EN ROSE」を。大澤自身もセルフカバーしているが、吉川晃司に提供したオリジナル・バージョンのアレンジで歌ってくれたのが嬉しい。
渡辺美里は名曲「BELIEVE」でスタート。レコーディング時、たった4小節のイントロにぴたりとくる音を探して、ずーっと鍵盤を触っていた大村の姿を覚えているという。
セカンドアルバムにして2枚組の大作『Lovin' you』を作るにあたって、当時のレコード会社の担当と事務所の人間、ふたりがふたりとも熱狂的に「アレンジは大村さんに!」と声を揃えた。
そして今夜のライブも、福岡での公演を観た大阪のラジオ局のスタッフが、それこそ熱狂的に「大阪でも!」と手を挙げたことで実現に至ったのだという。「熱狂を持った人がいると、こうして音楽が伝わる」そう話して歌った「My Revolution」で場内は大盛り上がり。
【槇原敬之】
■M17:モニカ
■M18:Rain
■M19:櫻の園
■M20:SWEET MEMORIES
最後は槇原敬之。「(大村アレンジの曲の数々を)諸先輩方が持ち歌として歌っていて羨ましかったけれど、(デビュー前の)大阪にいるときからずっと気に入っている曲です」と、自身もカバーバージョンを発表している、大江千里の「Rain」を。さらに大村の遺作「櫻の園」と永遠の名作「SWEET MEMORIES」を素朴なボーカルで締めくくった。
【出演者集合】
メロディーが楽曲の素顔だとしたら、「アレンジは化粧だ」という喩えがある。だが大村雅朗が施した化粧は実に長く保つ。洗っても洗っても落ちないほどに。これはもう魔法の域に類するものではないか。天賦の才と不断の努力が生み出した、人力の魔法。
大村は絶えず「今の音」を気にかけながら、本当のところは「未来まで残る音」を探していたのかもしれない。
◆前列
八神純子/南佳孝/渡辺美里/ばんばひろふみ/松本隆/大澤誉志幸/槇原敬之
◆後列
今剛/斎藤有太/山木秀夫/佐橋佳幸/亀田誠治/石川鉄男/山本拓夫/砂原良徳
Text by 大内 幹男
Photo by 井上嘉和
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