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【ライブレポート】落語と音楽の粋な戯れ「一期一会2023」
9月5日(火)に京都 先斗町歌舞練場にて開催された「一期一会2023」のレポートをお届け!
落語と音楽の粋な戯れ「一期一会2023」オープニングトーク
9月5日、一般社団法人 落語協会が主催する「落語と音楽の粋な戯れ『一期一会 2023』」が京都・先斗町歌舞練場で開催され、噺家·柳家喬太郎と田島貴男が出演。本イベントは【落語と音楽の粋な戯れ】をコンセプトに、“舞台に立つ表現者”の噺家とミュージシャンがコラボするという、まさに“一期一会”なもの。この日の京都公演を皮切りに、全国4公演が開催され、【柳家喬太郎×田島貴男】は横浜公演にも出演。音楽界きっての落語好きとして知られる田島貴男が敬愛する噺家·柳家喬太郎との二人会。音楽と落語、二人三脚な饗宴の模様をお伝えしたい。
田島貴男が噺家とコラボレーションする『一期一会』は過去にも東京・Zepp DiverCityと大阪・中之島公会堂で開催されたが、この日の会場は京都を代表する花街のひとつ、先斗町にある歌舞練場。芸妓や舞妓の舞踏公演「鴨川をどり」の会場としても知られ、大正期の歴史ある建築物を舞台にしての公演は、音楽はもちろんのこと、落語でも貴重なこと。会場には世代を超えてたくさんの観客が集まり、中には舞妓さんの姿もあって京都の趣もたっぷり。
舞台には上手に高座、下手にはギターやアンプのほか、出演者の名前が書かれた「めくり」が。寄席文字で書かれた演者の名前は落語では見慣れているけれど、音楽シーンにおいてはその印象さえ新鮮だ。開演の時刻を過ぎた頃、噺家が高座に上がる音楽·出囃子が鳴るが、この日の出囃子は田島貴男の「接吻」を三味線や太鼓で演奏。客席からはさっそく感嘆の声が漏れ聞こえ、期待が高まるなか、柳家喬太郎と田島貴男の2人がステージに姿を現す。
「こんな趣のある場所で演奏できて本当に嬉しいです!」と、開口一番に田島は初めての歌舞練場のステージ、そして敬愛する噺家とのコラボレーションに恐縮しつつも、落語への愛や自身のソロステージでいかに落語が参考になったかを熱く語る。柳家喬太郎は「『一期一会』な機会がありがたい。小屋の空気も変わり、新たな気持ちでできる」と言葉を交わしながら、会場の空気を温めていく。
1.Body Fresher
2.遊びたがり
3.しゃれこうべ
4.哀しいノイズ
5.築地オーライ(間奏に「東京ホテトル音頭」:柳家喬太郎)
6.Glass
7.接吻
8.鍵、イルージョン
9.まかしょ
2人会はまず、田島貴男のステージで幕を開ける。「Body Fresher」から、エッジの効いたリゾネーター·ギターをかき鳴らし、スラム奏法でリズムを打ち出し、1曲目から「ひとりソウルショウ」の真髄をこれでもかと見せつけていく。ギター1本で魅せるブルースマンを照らすのは、シンプルな赤い一灯の照明だけ。ギラリとした男くさいライブに目が離せない。「遊びたがり」ではフットスタンプやタンバリンを踏み鳴らしつつ、艶っぽい歌声を聴かせる。緩やかな空気を纏ったステージ、ギターを鳴らす所作に引きまれ、前のめりになって聴き入る観客の姿も見える。
田島貴男は落語の面白さを語りつつ、「今日は普段はあまりやらない曲をやりたい」と「哀しいノイズ」を披露。夏といえば怪談。落語には死神をネタにした演目もあるが、自身なりの死神をテーマにしたという「しゃれこうべ」を歌い、じっくりと、ストーリーテラーのように言葉を紡ぎ、じわりと熱を高めていく。かと思えば「築地オーライ」ではご機嫌にリズムを刻み、曲の合間に喋りを入れつつ、「(落語と音楽、それぞれのファンがいる)不思議な空気を面白いものに変えたい!」と、フリーダムな雰囲気でライブを進めていく。
「お、こんなところに寄席があるじゃないか♪」、演奏の最中に突如として、ステージにある高座にスポットライトが当たると、柳家喬太郎がしずしずと…、いや小躍りしながらステージに登場。そこから「一期一会」ならではのコラボになるわけだが、この日は落語ではなく、まさかの柳家喬太郎が歌い、田島貴男がギターを弾く「東京ホテトル音頭」の披露に。詳しくは書けないけれど、柳家喬太郎が作詞作曲した18番まである18禁ソングで、喬太郎ファンはまさかの歌唱に大喜び。落語会の“キョンキョン”は表情や仕草も色っぽく、京都版に歌詞をアレンジしたりと、サービス精神いっぱいに歌い、やんややんやの大喝采を受けてステージを後にする。
田島はそこから「築地オーライ」に戻るわけだが、先ほどの共演ならぬ狂宴が歌詞とリンクしているようで、客席は大賑わい。勢いがついたステージ後半は「Glass」から、また大人の色香漂う雰囲気へと変わる。ギター1本で音を重ねていき、唯一無二の音空間を紡ぐなか、一灯の光に照らされた田島のギラリとした表情にも引き込まれてしまう。「接吻」では夜の匂いをぐっと高め、ゆったりとした時を音で描いていく。アコースティックでの演奏はシンプルだからこそ、メロディの秀逸さや歌声が一層際立つ。「鍵、イルージョン」では機材トラブルが起きるも「宇宙からの電波が…」と笑いに代えつつ、丁寧にかつ、エネルギッシュに音を重ねていく。ギターをかき鳴らし、雄々しく歌い切ると、次曲へ。リゾネーター·ギターに持ち替え演奏を始めたかと思えば、柳家喬太郎の出囃子「まかしょ」が鳴り響く。
「ギターの出囃子で出ようとは、思いもみませんでした♪」と、ここからは柳家喬太郎の高座へ。先ほどの田島の機材トラブルも「宇宙からの電波はメフィラス星人らしいので、ご安心を♪」と、ウルトラマン好きの噺家らしいアドリブで笑いに代える。本編前に観客の気分をほぐす“枕”では、自己紹介がてらややブラックな時事ネタを交え、時に高座に寝転がったりと、自由気ままでキレのある喋りがとにかく面白い。笑いが絶えないまま、羽織をさっと脱ぎ、本編へと見事につないでいく。
「布哇の雪」
この日柳家喬太郎が選んだのは、自作の新作落語「布哇(ハワイ)の雪」。新作落語の雄として名を馳せる彼の作品のなかでも、名作と云われる噺だ。雪深い新潟·上越高田に住む老人が孫娘とともに、ハワイに住む初恋の幼馴染に会いに行くという内容だが、どの登場人物も表情豊かでキャラが濃い! あっという間に話に話の中に入り込めてしまう。特に老人と孫娘の会話のやり取りはアグレッシブで目が離せなくて、ツッコミのスピード感も抜群。かと思えば、アドリブで自身の公演の宣伝を交えてみたりと、落語の概念を打ち壊す自由気ままな話術に誰もが夢中になって聞き入っている。人情噺の後半には、オチに向けて照明がぐっと暗くなり観客の心情を鷲掴みにしていく…。
エンディング:プライマル
話の最後は、常夏のハワイに故郷·上越高田を思わせる雪が降り、老人が幼馴染との約束を果たすシーン。じんわりと心に沁みる話のなかで、田島貴男がステージに登場し、落語の最中に音を入れる”ハメモノ”をギターで演出。降り積もる雪の情景をギターで表現していくと、柳家喬太郎の噺はそのまま終わりを迎える。儚いギターの旋律はそのまま「プライマル」へと曲が繋がれていく。柳家喬太郎の高座の照明は落とされるも、まだ彼の演技は続いていて、「布哇の雪」と「プライマル」の世界観が共鳴。ステージはそのまま美しいエンディングを迎え、柳家喬太郎と田島貴男の2人会の幕が閉じた。
Photo by 井上嘉和
<イベント概要>
落語と音楽の粋な戯れ「一期一会2023」
【京都公演】
■開催:9月5日(火) 開場18:30/開演19:00
■会場:先斗町歌舞練場
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