門上西林 物見遊山 【#183/2020.4.4】
2020-04-04

今回は<始まりとか希望をテーマにした作品>
●今夜の選曲●
M① Love / John Lennon/Plastic Ono Band ....... (西林選曲)
M② Lost Stars / Adam Levine ...... (門上選曲)
M③ Bitter Sweet / Joe Sample
(ラスト・ソング) ...… (西林選曲)
※今月のラスト・ソングの選曲テーマは『苦味』
門上武司・西林初秋が週替わりで担当する『放送後記』
今週の担当は西林さんです。
--------------------------------------------------
ありふれたものとして気にもとまらない事物を、あらためて意識に刻みつける表現の手法を「異化」といって、ロシア・フォルマリストたちは文学のもっとも根本的な手法として提示しました。学生のころ、大江健三郎がよく語っていたのでわたしにも刻み込まれていて、小説や映画や音楽でしばしばそんなしあわせな体験をすると、いまでも『小説のたくらみ 知の楽しみ』の一文を思い出します。
今回の放送で紹介した映画「希望の灯り」でも異化が起こりました。名もなく、貧しい労働者たちの物語。ドンパチもなければ、ファンタジックな出来事もスペクタクルも起きないのですが、圧倒的な映像が、日々、生きていくことの慈しみをみごとに描いていて、試写が終わって、エレベータで地上階へ降りるとき、しあわせや希望は遙か彼方の、眼を凝らさなければみえない遠くにあるのではなく、ほんの身近の、近すぎて気づきもしないところにあるものなんだと思えてきたのです。あたたかい灯りがともった心で外にでると、車の騒音につつまれた四つ橋筋や堂島の町並みが、それまでとは違った様相で迎えてくれました。
<西林初秋>


