門上西林 物見遊山 【#263/2021.10.16】

『カトラリーと箸』
<西林選曲>
Dinner With Friends/Count Basie & His Orchestra
<門上選曲>
あとがき/風
<ラストソング/テーマ「食」>
セレクター:門上武司
オムライス/ 遠藤賢司
門上武司・西林初秋が週替わりで担当する『放送後記』
今週の担当は西林さんです。
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箸の使い方には未だ自信がありません。カトラリーについては言い訳をする前に逃げ出したくなります。感謝は正しい箸使いにつながると教えてくれたのは小笠原敬承斎先生。小笠原流礼法宗家の方です。一時期、定期的にお会いして礼法についてわかりやすく教えていただいていました。
いつか番組でもお話しましたが、小笠原流礼法は室町時代に、武家社会において確立されました。良家の子女ではなく、武士のための礼法なので、所作の美しさの裏にそう振る舞う意味があるのです。「箸先五分、長くて一寸」という教えがあります。箸先の汚れはなるべく3センチ以内にとどめておくのがよいという教え。昔の小笠原家に仕えていた女中さんにはいじわるなところがあって、食事をして帰った客の箸を火鉢につっこんで箸先にどれだけ灰がつくかで客を値踏みしたといいます。
しかし武士の嗜みとしてなぜ箸先をあまり汚さない方がいいのか。相手への不快感はわかります。それだけなのか?実際に試してみてその理由が飲み込めました。箸先3センチだけならちょっとしかはさめないし、つまめないのです。つまり少量をゆっくり口に運ぶことになり、暴飲暴食が防げます。満腹による身体の倦怠感も生まれません。いざというときすぐ働くことができるのですね。いやはや、小笠原流礼法の教え、恐るべしです。
<西林初秋>


