物見遊山
門上西林 物見遊山 【#365/2023.9.30】(最終回)[9.30 sat]

「門上西林 物見遊山」の最終回は番組恒例企画『三千円 一〝本〟勝負』で締めくくりました。一冊の古本から始まる話の旅も今夜で終わりです。7年間お聴きいただきありがとうございました。
来週からは、門上武司が様々なジャンルの人たちとトークセッションを繰り広げるスタイルの「物見遊山」となります。
第二章の「物見遊山」もどうぞ宜しくお願い致します。
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●今夜の選曲●
<門上選曲>
アジアの純真 / チャラン・ポ・ランタン
<西林選曲>
Here Comes the Sun / The Beatles
門上武司・西林初秋が週替わりで担当する『放送後記』
最終回の担当は今回ご卒業される西林さんです。
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重松清は宮本輝を読み、宮本輝は山本周五郎を読み。今回は3人の作家の短編集を紹介して、小説を読む愉しみをお喋りしました。3人に共通しているのは、地面(じべた)に近い無名の人々の暮らしを描くこと。英雄も、名奉行も、賢者も登場しませんが、どんな困難な状況でも生きることを肯定する視線が、これまた、地面(じべた)に近いところで生きる市井の読者を惹きつけるのでしょう。
「中野重治の詩は、あれはみんな演歌ですね。中野重治の詩の凄さは、そこにありますね」といったのは井上靖。このことばは3人の作家にそのままあてはまるでしょう。さらにいえばそれは日本の小説に限ったことではありません。『赤と黒』でもいい。『罪と罰』でもいい。『アンナ・カレーリナ』でもいい。じっくり読み込むと、すぐれた小説を形成するいくつかの血管の1本には、演歌が流れていることに気づきます。だからこそ小説は、心滅びゆく夜やこの世のにがさに震えた夜にゆっくりとページをめくりたくなると改めて思うのです。
<西林初秋>