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CIAO 765

ぼくらもみな、輝ける星[10.27 mon]

Buongiorno a tutti! (ブオンジョルノ・ア・トゥッティ)
こんにちは。
どうも、僕です。野村雅夫です。

しばらく前にようやく読み終えました。僕がすべての作品を読んでいる作家、増山実さんの最新作『われらみな、星の子どもたち』です。

去年の元日、能登半島を襲った大地震。大阪に住む主人公は故郷の惨事を入院中の父親に伝えます。彼の両親は戦後、若い時に大阪へ出てきて家庭を築き、今は父同様、母も同じ病院の別の部屋で過ごしている状況。主人公は能登を案じて現地へ向かい、親戚を回って話を聞きながら、自分がいかに家族の歴史を知らずに生きてきたかを痛感。家族史を掘り起こすことは自分にとっても大切だし、それがきっと病院で衰えている両親にとっても良い刺激となるはず。彼は方方で話を聞く旅を繰り返すことになるんです。

今作は増山さんの半自伝的な要素があると聞いています。既存の小説に出てきたエピソードの変奏もあるものの、決して著名人ではない市井の人(主人公のお父さんは豊中のクリーニング屋さん)にだって、探れば数奇な巡り合わせがあるものなのだと感じ入ることができました。能登の一族の物語は、枝葉のように北海道、金沢、大阪、和歌山、そして海外ともつながります。それはまるで、夜空に輝く星座のよう。地上から見てすぐにわかる明るい星のほかにも、無数の星が光を放っている。大地の人々の生きざまと関わりを夜空の星に重ね合わせるプラネタリウムという装置も物語の要所でうまく機能します。

怒涛の展開! ではないけれど、しみじみと自分や家族の来し方行く末に思いを馳せたくなる小説でしたよ。星のきれいな秋の夜長に、あなたもいかがですか?

今週も、聴ける範囲でのおつきあい、まずは今日のおやつタイムの15時まで、よろしくです。