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☆内田ラグビー部長のラグビー通信 10月23日号☆[10.23 mon]
いよいよ佳境!!
今週のラグビー通信もじっくり読み込んでくださいね!!
ラグビーワールドカップ2023 フランス大会。
日本時間では昨日・一昨日の早朝、
準決勝二試合がパリ郊外のサン・ドニ、スタッド・ドゥ・フランスにて開催されました。
準決勝・第一試合は、ニュージーランド 対 アルゼンチン。
2019年大会からの4年間は、アルゼンチン、フランス、アイルランドに敗れ、
国内での批判を浴び続けたニュージーランド。
登録メンバーの約半分が2019年大会も経験しているベテラン、
残りの約半分が初めてワールドカップを経験する若手という編成で臨む今大会。
開幕戦で地元フランスに敗れ先行きが不安視されたものの、
その後の試合を危なげない内容で勝ち進み、2位ながらも予選プールを通過しました。
ただそのため、いきなり準々決勝で
その時点で世界ランキング1位のアイルランドとぶつかることになったニュージーランドでしたが、
文句の付けようがない素晴らしいパフォーマンスでその死闘を制し、準決勝に駒を進めてきました。
対するアルゼンチンは、2012年以降ニュージーランド・南アフリカ・オーストラリアとの
南半球四カ国による対抗戦「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」に参加して以降、
急速に力をつけてきました。
さらに、近年は海外のプロチームに所属する選手も増え、
今回の開催国フランスでプレーしている選手も多く、準決勝の先発メンバーでは
そのうち7人がフランスのクラブに所属するプレーヤーでした。
フランスの各会場の雰囲気に慣れた選手が多いこともプラスに働いたのか、
日本戦、ウェールズ戦とアルゼンチンらしいフィジカルの強さと勢いのあるランニング、
そしてキックといったその持ち味を大いに発揮して勝ち上がり、勢いに乗ります。
さらに、2019年大会が終わってからこれまでの間に、
二度もアルゼンチンがニュージーランドから勝利を収めていることもあって、
戦前は接戦を予想する声もありました。
しかし、結果はニュージーランドが 44-6と圧勝。
アルゼンチンにいいところを引き出させないまま、試合を終えました。
アルゼンチンは前半から積極的に攻め込むも、
ニュージーランドの包み込むようなディフェンスの前になかなか突破することが出来ません。
これまでの予選、準々決勝での激しい試合の連続で疲労が溜まっていたのか、
(内田の目には)この日のアルゼンチンの動きがシャープさを欠いているように感じました。
そういう意味では、やはり選手層の厚さが大会後半となるこのタイミングでの勝敗に大きく影響することを実感します。
もちろん、予選も含めてそれは同様で、日本代表が抱える課題の一つだとも思います。
そして、もう一つこの試合でその差を分けたのはやはり、決定力の違いではないでしょうか。
スタッツ(データ)を見ても、地域の支配率、
ボールの支配率は(ややニュージーランドが上回ってはいるものの)そう大差が無いのにも関わらず、
これだけの得点差となったのは、やはりニュージーランドが攻めに転じた時に
いかに確実に得点につなげたかということを表しています。
チーム全体でタックルをした数は両チームほぼ同じながら、
アルゼンチンはその成功率がニュージーランドの約半分。
それだけ、ニュージーランドに突破されてしまったというわけです。
逆にアルゼンチンとしては、ボールキャリーと言われる指標はこれまでの試合で最も高い、
つまりこの大会で最もボールを持って前に進むことが出来た試合になりましたが、
それをことごとくニュージーランドのディフェンスに阻止されてしまい、得点につなげることができませんでした。
(内田が思うひとつの)分岐点は、やはり前半31分アルゼンチンが得たペナルティーで、
トライを取りに行かずペナルティーゴールを狙ったことではないかと。
この時点でのスコアは、3-10。
ゴールが成功して6-12と差を詰めることにはなりましたが、前半残り10分というタイミングで
ここは強気に時間をかけてトライを取りにいって(ゴールも奪って)10-12で折り返すことができれば、
後半もまた違った展開になったのではないかと思います。
もちろん、あくまで「たられば」の話であって、本当にトライを取れたかどうかはわかりません。
でも、その消極的に見えた判断がその後のチームの勢いに差を生んだのではないかと思うのです。
ニュージーランドは、前回大会の準々決勝を素晴らしい内容で46-14とアイルランド相手に快勝しておきながら、
そこで気が緩んだのか続く準決勝では全くイイところがなくイングランドに7-19で敗れてしまったという苦い思い出があります。
今回は同じ轍を踏むまいと、
「我々は(相手が世界1位だとしても)アイルランドに勝つために来たんじゃない、優勝するために来たんだ。」と話し、
最初から最後まで試合を通じて高い集中力を保ち続けたのでした。
アルゼンチンは自分たちが強みとするスクラムでも優位に立てず、試合途中からまた雨が落ちる中、
悲しい敗戦となりました。
そして、日本時間では昨日の早朝に行われた準決勝・第二試合は、イングランドと南アフリカが対戦。
前日の第一試合よりもさらに強い雨が降り続く中、
前回2019年日本大会の決勝戦と同じカードとなった両国の対戦は、最後の最後に南アフリカに勝利の女神が微笑む結果に。
今回の南アフリカの試合メンバー23人中15人が2019年決勝の経験者で、
かつフォワードの先発8人は全員その前回大会決勝戦のメンバーという布陣。
対するイングランドは、内容的には苦しい試合を続けながらも唯一無敗でここまで来たチーム。
ドーバー海峡を渡ってやってきたイングランドの応援団が、
試合が始まる前からイングランドの応援歌「スウィング・ロー・スウィート・チャリオット」を
大合唱するという雰囲気の中、試合は始まりました。
特にその強力フォワードを看板とする両チームだけに、
試合前から肉体と肉体の激突、フィジカル・バトルになることは予想されていましたが、
この日は雨が降り続く中ボールがすべりやすいということもあり、より肉弾戦の様相が強くなりました。
観ていて面白くないと酷評されながらも勝つために徹底的にフォワードのラッシュとキックにこだわるイングランド。
南アフリカも、これまでの試合でキックを使った比率はそれほど多くないものの(むしろベスト4に残った国の中では最も低い)、
キックしたボールを効率良く再獲得して得点につなげてきましたが、
イングランドはそれぞれ170センチ、177センチと身長ではそれほど身長が高く無いコルビ、アレンザという二人のウイングに対して
高く上げたボールを身長で勝るイングランドのプレーヤーが取り合うという作戦を仕掛け、これが功を奏します。
この二人のスピード豊かなランナーをウイングに配置することで、
以前よりも攻撃のバリエーションが広がっている南アフリカですが、この日はそこを狙われることに。
さらにイングランドはこれまで以上に気迫溢れるプレーでコリジョンと呼ばれる接点の局面で相手より優位に立ち、
そこで得たペナルティーゴールを決め確実に得点します。
南アフリカは、前半を6-12となんとかワンチャンスで逆転できる得点差で折り返しますが、
この日は何をやってもうまくいきません。
後半に入って、パスでボールを動かそうとするも、雨で滑るボールが手につかず、
攻守が目まぐるしく入れ替わる展開になります。
そんな中、後半13分イングランドがキャプテン、オーウェン・ファレルのドロップゴールで
南アフリカがワンチャンスでは追いつけない8点差とすると、
そこからは「試合の残り時間」というプレッシャーもが南アフリカに襲いかかり、刻々と時間が過ぎていきます。
雨の影響で攻め手を欠く南アフリカの状況に、なんとなくイングランドの勝利が近づきつつある。
という雰囲気も漂い始めていましたが、そこはやはり前回王者の南アフリカ、一言で言うならば「しぶとい」。
終盤、ベンチから途中出場した南アフリカの控えメンバーが躍動します。
ファフ・デクラーク、ハンドレ・ポラードという前回の優勝メンバーでもあるベテランのハーフ団(9番・10番)が
試合をコントロールするとともに、両プロップが替わったスクラムでも優勢に立ち、
残り時間約10分というところで途中から登場したスナイマンのトライとポラードのゴールで、13-15と2点差に詰め寄ります。
そして、残り3分を切った頃、スクラムでイングランドが痛恨のペナルティー。
前回大会の得点王でもあるポラードが約50メートル近いゴールキックを決めて逆転。
この時、試合開始からずっとリードしていたイングランドの手から勝利という名の決勝戦への切符がするりと抜け落ち、
最後の最後に逆転した南アフリカが16-15の一点差で勝利をもぎとったのです。
16年前、今回と同じフランスで開催された2007年大会の決勝もまたこの両国による対戦だったのですが、
その時も、前回2019年の決勝も、
そして準決勝ながら今回も、南アフリカが勝利することになりました。
これで、決勝戦は ニュージーランド 対 南アフリカ という組み合わせとなりました。
アイルランドとの激闘を制した後、気を緩めることなくアルゼンチンを退け、
いま最も充実しているのではないかとさえ感じさせるニュージーランド。
片や、フランス、イングランドといずれも決勝戦の相手になってもおかしくないようなチームに対して、
総力戦で勝ち残ってきた南アフリカ。
いずれもそのプロセスは異なれど、一戦ごとにチームとして成熟してきました。
ニュージーランドは、大一番となった準々決勝のアイルランド戦。
それまでの試合で大活躍していたウイング、マーク・テレアを試合メンバーから外します。
その理由は、チームが決めていた門限を彼が破ったから。
怪我で試合が出来ないわけでも、パフォーマンスが落ちたからでもありません。
むしろ、彼がいなくなることは大きな戦力ダウンになりかねません。
それでもチームのルールを破った、「規律」を守れない者は許されません。
試合においても「規律」を守れない者は反則を犯します。そのことを絶対に許さない。
たとえ戦力ダウンになろうとも、チームの規律を優先する。
「良きプレイヤーである前に、良き人であれ。」それがオールブラックスのカルチャーなのです。
だから、彼がいなくても、逆に彼の代わりに入ったプレーヤーが活躍し、アイルランドに勝つ。
そして、テレアもまたその汚名を返上するかのように、準決勝のアルゼンチン戦で躍動したのでした。
学びを経てさらに彼は強くなったことでしょう。
そして、それをチームのみんなが認める。
そして、またチーム全体が強くなっていく。
このブレないところに、オールブラックスの強さを感じます。
対する南アフリカ。
昨日の準決勝のみならず、これまでも試合ごとにメンバーの構成を変え、
ベンチメンバーどころか登録メンバー33人全員の総力戦で戦ってきました。
そして、それを意図して使い分けるコーチ陣。
ここに彼らの強みがあります。
それは先発メンバーのみならず交代メンバーとしてベンチに登録する選手の選考にも反映されています。
現在のラグビーでは、ベンチに入ることができるのは最大8名。
たいていは、各ポジションをカバーできる人を想定してメンバーを選びます。
そのため、スクラムを組むフォワードと、キックやパスを得意とするバックスの人数構成は、
フォワード5:バックス3か、フォワード4:バックス4というケースが比較的多い。
それを彼らは今大会、試合ごとにいろいろなパターンを駆使し、時にはフォワード7:バックス1ということもありました。
つまり、もしバックスに怪我人が2人以上出れば、
普段やったことがないポジションでプレーする人が出るかもしれない。ということです。
でも、そのリスクを犯してでもその試合はフォワードに徹する。と。それほどの強い意志を持っているわけです。
準決勝では、試合中にミスが出ると(おそらく想定していたよりも早いタイミングで)すぐに交代メンバーを投入しました。
そして、終盤で2点差に追いついたトライとゴールも、最後の逆転ゴールも、
その交代したベンチメンバーが中心となって活躍した結果、生まれたものでした。
それが勝利の瞬間、コーチ陣が抱き合って喜び、
ヘッドコーチが感動で顔を伏せたまま動くことができなかったシーンにつながるのです。
南アフリカもまた、自分たちの信念にしたがってチーム全員で戦っています。
これまで何度も対戦し、お互いの強みを良く知るこの両国。
そして、同じく三度の優勝を誇る最多優勝国同士による決勝戦。
つまり、次の決勝戦に勝ったいずれかが、ラグビーワールドカップの新たな史上最多優勝国となるわけです。
決勝戦は、日本時間で来週29日(日)の午前4時から。
前日土曜日の同じく午前4時から行われる三位決定戦も含めて、
ラグビーワールドカップ2023フランス大会も残すところあと2試合。
世界最高峰のスペクタクルな試合が続きます。地上波テレビでの放映もありますので、ぜひお見逃しなく。
ラグビー通信も終わりが見えてきました…。
最後までお楽しみに!!
タイムフリーもぜひ、どうぞ。
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