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CIAO 765

爪の垢を煎じて飲ませてください #まちゃお765[7.15 thu]

Buongiorno a tutti! (ブオンジョルノ・ア・トゥッティ)
おはようございます。
どうも、僕です。野村雅夫です。

もう何ヶ月も前のことなんですが、贔屓にしている飲食店で、精神科医の友人とバッタリ会いました。元気ですか? と声をかけたら、その向かいには、精悍で知性あふれる雰囲気のイケメンが。お、医療関係の方なのかなと思ったら、すぐに紹介してくれました。

確かに、医療関係、若い精神科医だったんですが、耳を疑ったのが翻訳家でもあって、なんとなんと、第六回日本翻訳大賞の受賞者だってんですよ!

ささやかながら僕も翻訳をする身として、もうひれ伏す勢いでリスペクト。今、湯呑みを店から借りてくるんで、爪の垢を煎じて飲ませてくださいとお願いしようとしたところ、「今度またお会いできたら、ぜひ字幕翻訳の話もお聞かせください」なんて言われてしまいまして、ますます恐縮。

後日、FM COCOLOの僕のロッカーには、彼のエッセイ『翻訳目録』が届きました。なんとまぁ、律儀な方であろうか! 読んでみると、これが面白い。「見過ごされているものに目を向けることができればと普段から思っている」という彼、阿部大樹さんは、この本の中で、次から次へと、気になる言葉を拾い集め、丁寧に調べ、そこに驚きの発見や感慨を記していきます。

たとえば「ムショ」という刑務所を指す隠語についてなんて、目からウロコ。広辞苑の語源の間違いを正すレベルでルーツを突き止めているんですから。

そして、装丁が斬新。言葉がくるくる円を成していたり、波打ったりと、言葉をビジュアルとしても楽しませてくれる趣向。デジタルではなく、紙の書物としての良さがひしひしと伝わります。

最後に、表紙のイラストにもご注目。不穏なたたずまいの男、首元には大きな文字でTRADITOREとあります。これはイタリア語だと、裏切り者という意味。あちらにはTraduttore, traditore.(トラドゥットーレ、トラディトーレ)という警句がありまして、「翻訳家は裏切り者」、つまり、「翻訳には誤訳がつきもの」という意味なんです。

おそらくは、この警句を意識してデザインされたのだと思いますが、僕もいつも肝に銘じているフレーズだけに、ますます阿部大樹という男に惚れてしまうのでありました。

今朝も11時まで、聴ける範囲でのおつきあい、よろしくです。