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CIAO 765

「わたしのいるところ」の意味するところ  #まちゃお765[5.4 mon]

Buongiorno a tutti! (ブオンジョルノ・ア・トゥッティ)
おはようございます。
どうも、僕です。野村雅夫です。

COVID-19が猛威を奮い、突如閉じこもりがちになってしまった現代人。「居場所」の意味や価値も問い直されていると思います。そんなタイミングで読み終えたのが、この『わたしのいるところ』という不思議な小説。

原題はイタリア語だし、舞台もイタリア、主人公の40代独身女性もイタリア人なのですが、作者はジュンパ・ラヒリと、イタリアの名前ではありません。

ラヒリさんはインド系アメリカ人。インド人移民の娘としてロンドンで生まれ、3歳でアメリカへ移住します。ボストン大学で学んだ彼女は、クリエイティブ・ライティング、そしてルネサンス研究の分野でそれぞれ修士号と博士号を獲得し、99年に短編集で作家デビュー。長編は映画化されたり、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストで1位になったりと、一躍人気作家となると、家族でなぜかローマへ移住します(現在はまたアメリカへ戻っているようですが)。

ローマにいる間、彼女はイタリア語でエッセイやこの小説を書くんです。それがどれほど大変なことか。だって、わざわざ「外国語」で書くんですもの。

僕はこの本を読み始めて、てっきりエッセイだと思いこんでしまいました。日常の小さな出来事や、主人公のささやかな考えや思いが記録されていたからです。派手な出来事って、物語にしやすいし、読者をわりとあっさり引き込めるものですが、些細なことをベースに小説を編むのは至難の業です。

ひとつの短い話が数ページ。それが46あります。読み終えると、主人公の名前すら明かされないのですが、じわじわじわじわ、塵も積もれば的に悲喜こもごもが孤独な彼女の居場所に降り積もり、やがて大きな決断をするのです。読後感はあたたかい。

オコモリーニの皆さんに、オススメです。他の本と並行しながら、1日ひとつ、一ヶ月くらいかけて読んでもいいかもしれません。僕はラヒリの他の本にも興味が湧いています。

今週も、聴ける範囲でのおつきあい、まずは今朝11時までよろしくです。