CIAO 765
もう無関心ではいられまへん。[2.6 mon]
Buongiorno a tutti! (ブオンジョルノ・ア・トゥッティ)
おはようございます。
どうも、僕です。野村雅夫です。
かつてアルベルト・モラヴィアという作家がいました。なんて書き出しが似合うほど、1990年に他界して以来、ここ30年ほどの間に、日本はおろかイタリアでも人々の話題にのぼることが少なくなっていたんです。でも、かつての存在感ときたら、それはそれはということで、日本でもこれでもかと訳されていました。
去年も僕は古本屋でそんなモラヴィアの小説を見つけて、一冊買い求めたんです。懐かしいな。なんて思うと同時に、初期の代表作『無関心な人々』になぞらえるなら、僕も気づけばモラヴィアに無関心になっていた気がする。いかんいかん。そんな思いで手に取ったわけですが、先日、久々に新訳がこうして世に出ました。
これ、映画好きの方にはベルナルド・ベルトルッチ監督『暗殺の森』の原作だと言えば、話が早いかもしれません。全体主義のファシズム政権下で、ひたすらに「普通」「正常」であることを隠れ蓑にして自分の異質さと向き合うことを避けてきたマルチェッロが関わることになる暗殺計画とその後の彼がたどった道のりは。
古典は時代を越えていく力がある一方で、言葉は古びていくものなので、世代ごとにアップデートが必要。それこそ、光文社のこのシリーズの主眼なわけですが、そこにモラヴィアが加わったことに喜びました。訳は僕の大先輩にあたる関口英子さん。タイトルも新たに『同調者』とされました。原題のコンフォルミスタというのは、なんにでも順応してしまう、迎合してしまう、同調してしまう人のことを指す言葉なので、なるほどな、と。尊敬する研究者土肥秀行さんの解説、とりわけ小説と映画の比較なんてすごく勉強になりましたよ。
文庫で気軽に手に取れるようになって蘇った文豪、モラヴィア。全体主義のきな臭さがまた世界にはびこる現代に、これ、オススメです。
今週も、聴ける範囲でのおつきあい、まずは今朝11時まで、よろしくです。