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CIAO 765

熊と過ごした1ヶ月 #まちゃお765[4.22 thu]

Buongiorno a tutti! (ブオンジョルノ・ア・トゥッティ)
おはようございます。
どうも、僕です。野村雅夫です。

僕はここ1ヶ月ほど、毎晩のように熊と過ごしていました。熊につきあっていました。

マルコ・マルターニというイタリアの作家によるノワール小説『老いた殺し屋の祈り』。番組で去年盛んに取り上げた『コロナの時代の僕ら』を翻訳した飯田亮介さんの最新の仕事です。

2月に出されてすぐKindleで購入していたんですが、例によって僕の傍らには積読タワーがそびえていますので、すぐに読み始めることができず。そして、読み始めてからも、他にもあれもこれもと読み物があったので時間がかかったのですが、このほど読み終えて、充足感と余韻に包まれています。

ストーリーを公式サイトから引用しましょう。

還暦をとうに過ぎながらも組織一の殺し屋として名を轟かすオルソ。ある日心臓発作に見舞われて生死の境を彷徨った彼は、40年前に生き別れた恋人と娘に一目会いたいと願うように。オルソは忠実に仕えてきた〈組織〉に楯突き、二人が暮らすというイタリア中部の小さな町へ向かうが、道中の列車内で男に襲われる。その男の連れにはどこか見覚えがあり――。イタリア映画界の旗手が放つ慟哭の傑作ノワール。

で、熊ってどういうこと? 実は、主人公の名前、オルソって、イタリア語で熊なんです。見上げるほど背が高く、ごつごつした身体なので、熊と呼ばれるようになったこの男。殺人マシンと化していた自分の人生とは一体何だったのか。あり得たかもしれない別の人生を思い描きながら、オルソがもがきあがき抗う様子には目を見張ります。

いくつになっても人生はやり直せるんじゃないのか? あくまでアクションを重視しながら、彼の取る行動と選択そのものが大きな問いかけとなって大団円へと… 老境に差し掛かった殺し屋の人生のやり直し。静かなもんだと思ったら、大間違い。手に汗握りました。

原題はCome un padre。「ひとりの父親として」、なんですよ。それを意識しながら読むと、また味わい深いものがあります。オススメ!

今朝も11時まで、聴ける範囲でのおつきあい、よろしくです。